バーリー銅(#1銅)とは?国際規格で理解する高品質銅線スクラップ
銅スクラップを国際取引する際に必ず耳にする「バーリー銅(BARLEY)」という言葉。これは、ISRI(国際スクラップリサイクル協会)が定めた国際規格コードで、最高品質の銅線スクラップを指します。
日本国内では「ピカ線」「特一号銅線」として親しまれていますが、海外取引や輸出入の現場では「BARLEY」というコードが使われています。本記事では、千葉県成田市で金属リサイクル事業を展開する成田メタルが、バーリー銅の国際規格上の定義、日本のピカ線との関係、そして国際取引における重要性を徹底解説します。
バーリー銅(BARLEY)とは?ISRI国際規格の定義
バーリー銅の正式な定義
**バーリー銅(BARLEY)**は、ISRI(Institute of Scrap Recycling Industries:国際スクラップリサイクル協会)が定めた銅線スクラップの国際規格コードです。
ISRI公式定義(2022年版):
“Barley No. 1 COPPER WIRE. Shall consist of No. 1 bare, uncoated, unalloyed copper wire, commonly known as Bare Bright copper wire. Wire gauge subject to agreement between buyer and seller.”
日本語訳: 「バーリー No.1銅線は、被覆のない、コーティングされていない、合金化されていない1号銅線で構成され、一般に『ベアブライト銅線(裸の輝く銅線)』として知られる。線のゲージ(太さ)は売買者間の合意による。」
バーリー銅の重要な特徴
1. 線状の銅のみが対象
- 銅線(Copper Wire)のみ
- 銅板、銅管、銅棒などの塊状・管状銅は含まれない
- 電線から被覆を剥いた裸の銅線
2. 最高純度の銅
- 銅含有率:99.9%以上(最大99.99%)
- 非合金(他の金属が混ざっていない純銅)
- 非コーティング(メッキや塗装なし)
3. 完全無酸化
- 「Bright(輝く)」の名の通り、美しい光沢
- 酸化や変色がない
- 「ピカピカ」の状態
4. 線径の基準
- 一般的にAWG 16ゲージ以上(約1.3mm以上)
- ただし、具体的な太さは売買者間の合意による
- 細すぎる線は別グレード(BERRY)に分類
HSコード(貿易統計番号)
バーリー銅の国際貿易における分類コード:
- HSコード:7404.00.12
- 「銅のくず及びスクラップ」カテゴリ
- 国際貿易で使用される統一商品コード
バーリー銅と日本の「ピカ線」の関係
日本国内での呼称
日本国内では、バーリー銅に相当する銅線スクラップを以下のように呼んでいます:
日本での名称:
- ピカ線(最も一般的)
- 特一号銅線
- ピカ銅
- 光線(ひかりせん)
- 光特号銅線
貿易呼称:
- Shiny Mill Berry(シャイニーミルベリー)
- Barley(バーリー)
バーリー銅とピカ線の対応関係
| 項目 | バーリー銅(国際規格) | ピカ線(日本国内) |
| 規格 | ISRI国際規格 | JIS規格/業界慣習 |
| コード | BARLEY | (規格コードなし) |
| 形状 | 銅線のみ | 銅線のみ |
| 最小線径 | AWG 16(約1.3mm)以上 | 単線直径1.3mm以上 |
| 酸化 | 不可(完全無酸化) | 不可(完全無酸化) |
| 純度 | 99.9%以上 | 99.9%以上 |
| 使用場面 | 国際取引、輸出入 | 国内取引 |
重要ポイント: 日本の「ピカ線」と国際規格の「バーリー銅」は、実質的に同じものを指しています。呼び方が異なるだけで、品質基準はほぼ同等です。
バーリー銅(#1銅線)の詳細仕様
合格条件
バーリー銅として国際取引されるためには、以下の全ての条件を満たす必要があります。
1. 被覆が完全に除去されている
合格:
- 電線の外側の被覆(ビニール、ポリエチレンなど)を完全に剥いた状態
- 裸の銅線のみ
不合格:
- 被覆が残っている → 別グレード(絶縁被覆銅線)
- 被覆の切れ端が付着している
2. 非コーティング
合格:
- 純銅のままの状態
- コーティングなし
不合格:
- 錫(スズ)メッキ → BERRY(別グレード)
- エナメル加工 → エナメル線(別グレード)
- ニッケルメッキ → メッキ線(別グレード)
- 過度のハンダ付け
3. 非合金
合格:
- 純銅(C1100、C1020など)
- タフピッチ銅
- 無酸素銅
不合格:
- 真鍮線(銅+亜鉛)
- 砲金線(銅+錫+亜鉛)
- リン青銅線(銅+リン)
4. 完全無酸化・無変色
合格:
- 赤銅色の美しい光沢
- ピカピカと輝いている
- わずかな変色も極めて軽微
不合格:
- 酸化して黒ずんでいる
- 全体的にくすんでいる
- 緑青(緑色の錆び)が発生
- 焼けて変色している
ISRI規格の記述: 「very negligible amounts of patina on the copper are allowable(銅の表面に極めてわずかな緑青は許容される)」とあるものの、実際の取引では完全無酸化が求められることが多いです。
5. 不純物・付着物がない
除外すべきもの:
- 過度に鉛が含まれた銅線
- 過度にハンダ付けされた銅線
- 真鍮線や砲金線の混入
- 過度の油分
- 鉄や非金属の混入
- 焼却による灰
- ヘアワイヤー(極細線)
- 脆い焼線(burnt wire)
特殊なケースの取り扱い
グリーン銅線(Green Copper Wire):
- 新品の未使用銅線
- 取り扱いは売買者間の合意による
油圧圧縮材(Hydraulically Compacted Material):
- 油圧でプレス圧縮されたバーリー銅
- 取り扱いは売買者間の合意による
バーリー銅の由来源
家庭から出るバーリー銅
家電製品:
- 洗濯機の配線
- 冷蔵庫の内部配線
- テレビ・モニターのヨーク線
- 電子レンジの配線
- 食器洗い機の配線
小型電気製品:
- コーヒーメーカー
- 扇風機
- ブレンダー
- トースター
- エアコン室外機の配線
- 携帯電話の充電器(太めの部分)
照明器具:
- 照明配線(太めのもの)
- 古い電話線
工業・業務から出るバーリー銅
建設現場:
- 電気配線工事の余り材
- 建物解体時の配線
- 高圧電線
- CVケーブル(被覆除去後)
工場:
- 製造設備の配線
- 電気機器の解体品
- モーター内部の巻線
- 変圧器の巻線
電気工事:
- IV線、HIV線(被覆除去後)
- CV線、VVF線(被覆除去後)
- キャブタイヤケーブル(被覆除去後)
バーリー銅を高価買取してもらうポイント
バーリー銅は国際的に最高値で取引される銅線スクラップです。国内取引でも最高値を実現するためのポイントをご紹介します。
1. 被覆を丁寧に完全除去する
重要ポイント:
- 被覆が少しでも残っているとバーリー銅にならない
- 絶縁被覆付き銅線として大幅減額
推奨方法:
- 専用の電線皮むき器を使用
- 銅線を傷つけないように慎重に
- 被覆の切れ端も完全に取り除く
価格差の例:
- 被覆付き(雑電線):400-1,000円/kg
- 被覆除去(バーリー銅・ピカ線):1,580-1,700円/kg
- 約1.6~4倍の価格差
2. 酸化させない
酸化を防ぐ保管方法:
- 乾燥した場所に保管
- 直射日光を避ける
- 湿気を避ける
- 通気性を確保
- 長期保管しない
酸化すると:
- バーリー → BERRY(軽度)
- バーリー → BIRCH(重度)
- 買取価格が5-15%下落
3. 異物を混入させない
分離すべきもの:
- 真鍮線
- 錫メッキ線
- エナメル線
- 1.3mm未満の細線
- 鉄線
- 圧着端子
分類のメリット:
- バーリー銅として最高値
- 計量が正確
- 査定がスムーズ
4. 線径を確認する
バーリー銅として認められる太さ:
- 単線直径1.3mm以上
- より合わせ線の場合、バラした1本が1.3mm以上
測定方法:
- ノギスやマイクロメーターで測定
- 不明な場合は買取業者に確認
細い線の場合:
- 1.3mm未満 → 2号銅線として別扱い
- 買取価格が5-10%程度下がる
5. 劣化前に早期売却
推奨タイミング:
- 被覆を剥いたらできるだけ早く
- 量がまとまったら速やかに
- 相場を待つより劣化を防ぐ
理由:
- 銅は空気に触れると酸化が進む
- 時間が経つほど光沢が失われる
- 劣化による価格下落は相場上昇で補えない
6. まとまった量で持ち込む
量による優遇:
- 少量:基本価格
- 中量(10kg~):やや優遇
- 大量(100kg~):価格交渉可能
- 定期取引:長期優遇価格
バーリー銅に関するよくある質問
Q1. 日本で「ピカ線」と呼ぶものは、全てバーリー銅ですか?
A. はい、日本の「ピカ線」は国際規格のバーリー銅(BARLEY)に相当します。
ただし、実際には:
- 完全無酸化の美しいもの → BARLEY
- わずかに酸化・くすみがあるもの → BERRY
日本国内では両者を区別せず「ピカ線」と呼ぶことが多いです。
Q2. エアコンの配線から取れる銅線はバーリー銅になりますか?
A. エアコンの配線(電線)から被覆を剥いた銅線で、以下の条件を満たせばバーリー銅になります:
条件:
- 単線直径1.3mm以上
- 酸化していない
- 汚れがない
注意: エアコンの「配管(銅管)」はバーリー銅になりません。バーリー銅は「線状」の銅のみです。配管は別グレード(CANDY)として取引されます。
Q3. バーリー銅とミルベリー銅は違うのですか?
A. 実質的には同じものを指しますが、使われる文脈が異なります。
バーリー(BARLEY):
- ISRI公式規格コード
- 正式な国際取引で使用
ミルベリー(Mill Berry):
- 「製粉所のベリー(実)」の意味
- 俗称、通称として使用
- 美しい銅線の見た目から命名
日本での貿易呼称:
- Shiny Mill Berry(シャイニーミルベリー)
- Barley(バーリー)
両方とも同じ高品質銅線を指しています。
Q4. 細い銅線でもバーリー銅になりますか?
A. 線径がAWG 16(約1.3mm)未満の場合、バーリー銅として認められないことがあります。
太さによる分類:
- 1.3mm以上 → バーリー銅(BARLEY)またはベリー銅(BERRY)
- 0.35mm~1.3mm → 2号銅線(BIRCH)
- 0.35mm未満 → 細線、毛線(より低いグレード)
ただし、ISRIの公式定義では「売買者間の合意による」とされているため、取引先によって基準が異なる場合があります。
Q5. 国内取引でもバーリー銅という名称を使うべきですか?
A. 日本国内の取引では「ピカ線」「特一号銅線」という呼称が一般的です。
使い分け:
- 国内取引 → ピカ線、特一号銅線
- 輸出取引 → BARLEY、Shiny Mill Berry
- 国際規格の説明 → バーリー銅
成田メタルでは両方の呼称に対応しており、国際規格に基づいた正確な査定を行っています。
Q6. バーリー銅は輸出できますか?
A. はい、バーリー銅(高品質銅線スクラップ)は日本から海外へ輸出可能です。
主な輸出先:
- 中国
- 東南アジア諸国
- 韓国
- 台湾
輸出の条件:
- HSコード:7404.00.12
- ISRI基準を満たす品質
- 適切な梱包と書類
ただし、国によって輸入規制が異なるため、事前確認が必要です。
バーリー銅と環境保護
銅リサイクルの重要性
バーリー銅を含む銅スクラップのリサイクルは、持続可能な社会の実現に不可欠です。
環境メリット:
- エネルギー消費を85%削減
- CO2排出を84%削減
- 天然資源の保護
- 100%品質劣化なしでリサイクル可能
国際循環経済への貢献
バーリー銅は国際的に取引される商品であり、グローバルな資源循環の一翼を担っています。
グローバルな流れ:
- 日本で使用済み電線が発生
- 被覆を除去してバーリー銅に
- 国内で再利用、または海外へ輸出
- 銅製錬所で新しい銅製品に再生
- 再び電線や電子部品として利用
この循環により、鉱山からの新規採掘を減らし、地球環境を守ることができます。
まとめ
バーリー銅(BARLEY)は、ISRI国際規格が定める最高品質の銅線スクラップです。日本国内では「ピカ線」「特一号銅線」として知られ、国際取引では「BARLEY」「Mill Berry」というコードで取引されています。
重要ポイント:
- 線状の銅のみ:銅板や銅管は含まれない
- 最高純度:99.9%以上の純銅
- 完全無酸化:美しい赤銅色の光沢
- 太さ基準:通常AWG 16(約1.3mm)以上
- 国際規格:世界共通の品質基準
- 最高値取引:銅スクラップの中で最高価格
- 環境貢献:リサイクルで85%のエネルギー削減
千葉県成田市の成田メタルでは、国際規格ISRIに基づいた正確な品質判定と、LME相場連動の公正な価格で、バーリー銅(ピカ線)の買取を行っております。
国内取引はもちろん、国際取引の知識も豊富な専門スタッフが、お客様の大切な資源を適正価格で買取いたします。電線スクラップをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
